去年の暮れも押し迫った頃、急に思い立って、広島から長崎へ向かった。
特に何も用事はなかったのだが、ただふらりと日帰りの旅に出たくなっただけ。
博多で、「白いかもめ」に乗り換える。
外は生憎の雨。。。
雨の長崎は風情があって楽しみだが、冬の雨はちょっと冷たすぎた。
28年前の精霊流しの日にみつけた、いちばんのお気に入りの坂を目指す。
その日は、マリア園の裏手の朽ちかけた洋館群の木陰に覆われて、
すこしジメッとした砂岩独特の香りを漂わせていた。
今では、この急な坂に、手摺りと街灯、それから「どんどん坂」という名前が付いていた。
坂の両脇に、三角形の断面の溝が切ってある正統派の所謂「オランダ坂」である。
対岸の造船所が、長崎らしさをさらに演出している。
冷たい雨に強い風も加わってきたので、
長崎でいちばん好きな南山手をさっさと抜けて、大浦天主堂の前を通って、
浜町に戻り、カフェ「HIKOMA」で暖を取ることにした。
なんとなく入るのに気後れがして、入り口付近でウロウロしていたが、
優しそうなマスターの姿と寒さに後押しされて、店に入った。
2階のギャラリーで写真展が開催されるこのカフェ。
止め処なく写真談義が続いたが、帰りの「かもめ」の時刻に、後ろ髪を引かれつつ、店を出た。
長崎本線で東に向かうと、すぐに雪が降り始め、列車ダイヤが乱れるほどの積雪になった。
写真を撮りに長崎まで来たはずだが、あまりの寒さと「HIKOMA」の暖かさで、あまりシャッターが切れなかった。
まあ、また来れば良いだけのことだ。
1枚目、3枚目:OLYMPUS PEN-D
2枚目:PENTAX LX